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ちいさな窓のある家
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# by aonokairo | 2017-01-01 01:01 | Note
※1週間ほどで記事削除します※


【映画感想】 劇場版「遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」_f0085832_2283969.jpg
まず大前提として、遊戯王という作品がカードゲームをテーマにしながら、何故かゲーム中にプレイヤーが命を落としたり何故か異次元へ行ったり何故かバイクに乗ったり何故か2クール使って築き上げた友情をたった一話で破壊したりする狂った作品であることを理解する必要がある。
そう言う前提があるから、別に海馬コーポレーションが宇宙進出を果たそうが童実野町がデュエルディスクを元に住民管理されていようが謎の力を持った少年が記憶を改竄しつつクラスに溶け込んで次元パワーを振りかざそうが、さして驚きはしない。
実はこれは鑑賞前に危惧していたことなのだが、だからこそ劇中で多少ぶっ飛んだことをされても「いや、遊戯王ってそういうもんだからね」と興奮を持って迎え入れられないのではと心配していた。結果から見れば杞憂だったわけだが。

さて、本作品は遊戯・海馬・新キャラクターの藍神(以下雑魚神くん)の3人を主人公として物語が展開するのだが、主人公らしくストーリーに関わろうとする遊戯をよそに、一生アテムを追いかけ続けるストーカー気質の極まった社長と、次元領域デュエルとかいう自分のシマに相手を誘い込みながらも作中一度たりともデュエルで勝てていない雑魚神くんという主人公の資格のまるで無い二人がでしゃばってくる。その迷惑な自己主張は、真に主人公である遊戯ですらも「ああ、こいつ主人公だったわ」と失念させてしまうほどで、上映開始から130分くらい実質主人公不在な状況が続く。まあセラがかわいいから別にいいや。

しかしそれでもスゲエのは、作中の海馬にいくら主人公の資格無し!と言っても、アテムと遊びたすぎて記憶の中のアテムをソリッドビジョン化したり、手札事故からハンドアドを一切考えない究極青眼を召喚しようが、千年パズルの組み立てのため宇宙ステーションを建造しても、地面からオベリスクをドローして(!?)「モンスター効果は無効やねんけど?」という雑魚神くんのもっともな主張を「モンスターちゃうし、これ神やから」と一蹴したり、たかがデュエル大会で肉体と魂のあり方について熱弁したり、やっぱりアテムと遊びたすぎて冥界(高位次元?)へ旅立ったとしても、その実行者が「海馬瀬戸である」という一点のみで全て許されちゃうトコロは流石社長!なんというキャラクターパワー!と驚嘆を隠せない。

転じて雑魚神くんは、本作独自のルールを持つ次元領域デュエルに海馬や遊戯を招待したり、邪悪パワーを得て暗黒次元領域デュエルに海馬や遊戯を招待したりしたけどほぼ全敗したと言っても過言では無い体たらくで、この次元領域デュエルの意味☆不明!度合いや、自身の噛ませキャラ臭などが相まって、彼の仕事は次元領域デュエルとか言うコミック力場にて視聴者を爆笑の渦に巻き込むのが目的だったのだろうか?と疑問を残さざるを得ない。
ちなみに次元領域デュエルが具体的にどういったモノなのかは、多分どれだけ真面目に映画を見ても分からないし、分からなくていいし、分かるべきは「次元領域デュエル」とかいう単語がもはやそれ単体で強烈なギャグセンスに満ち溢れているという事である。

一応ルール的な側面で補足しておくと、次元領域デュエルはモンスターの召喚にリリース(生贄)は不要で、モンスターのステータスはプレイヤーの精神力的なものによって決定されるデュエルのようなナニカである。

【映画感想】 劇場版「遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」_f0085832_22113512.jpg
一応雑魚神くんと愉快な仲間たち(チームプラナ)には、なんかよう分からんけど上司のカタキ取ったり、なんかよう分からんけど皆で高位の次元に行ったりしたいねん!という目的がありそれがストーリーに絡んでいるのだが、当たり前のように具体性が無かったり、そもそも目的達成のためのデュエルが全敗だったりという赤っ恥な結果である。
おそらくは、方向性は違えど互いに過去に縛られている雑魚神くん&海馬サイド、希望ある未来に向かわんとする遊戯サイドの対比を体現したかったのだろうが、そんな崇高なテーマも雑魚神くんが不甲斐なさ過ぎて観客には届かない上に、次元領域デュエルという高次元ギャグ領域に観客を誘ってしまうため、雑魚神くんの抱えるサイドテーマはまるっと台無しになっている。まあ俺に次元領域デュエルという単語を無秩序に使わせるというのが真の目的ならば、それは完全に成功しているのだが。

とは言うものの、先に述べたとおり多少の事があっても驚けないかも?という不安は次元領域デュエルという珠玉のネタにより回避されたのは喜ばしいことである。そもそもな話、結局のところ次元領域デュエルってのは「リリースの必要が無く」「半ば言った者勝ち的な風潮のある」最初期DMのルールを遠回しに再現したものである。その次元領域デュエルを筆頭に「シャーディーの登場」「DM時代のBGMとSE」「よく分からない俺ルール」「カード効果には言及せず、その分の尺を演出に回す」などなど、露骨にオールドファンを狙った作りを徹底しているのだが、それは間違いなく功を奏している。

無論、残念に思った点も多くある。
本作を最も楽しめるだろうオールドファンに反して、初期に詳しくない新規ファンやOCGメインのプレイヤー、ARC-Vから見始めた子供たちなどといったユーザーには、130分という長さも相まって人によっては退屈だったりつまらなかったり、納得できなかったりする人も少なからずいただろうとも思う。
また、130分という尺を使いながらも、結局デュエルをしたのは遊戯・海馬・雑魚神くんの3名のみで、フラグを立たせながらも最後まで出番の無かった闇バクラはともかく城之内くんすらデュエルに参加しなかったのは如何なものかと。謎次元走らせたりAGOしたりする前にデュエルさせろよ、城之内相手ならギリギリで雑魚神くんも勝てただろうに。
また、その長さ故にオールドファンであっても全編通すとまったく疲れないかと言えばそんなことは無く、特に後半のvs雑魚神戦に関しては、時間的に最もまぶたが重くなるタイミングで完全完璧に勝敗予測のつくデュエルを押しつけられるわけで、些か単調とも言える。

映画そのものの構成に関しても、日常パート・回想パート・デュエルパートの3つで構築されているのだが、例えば前作の「超融合 時空を越えた絆」は(そもそも超融合は約50分の中編作品なので単純な比較は出来ないけど)開始20分の間にキャラが集結し敵サイドの目的を全て明かし、残り30分をまるまるデュエルに割くよく言えば分かりやすい、悪く言うならいつものアニメ遊戯王と何ら変わらない構築である。
本作は日常、回想、デュエルパートが目まぐるしく移り変わり、ドラマティックではあるものの落ち着いて見ることが難しい構成であることも否定できない。それはつまり、「いつもの遊戯王」を見慣れたユーザー、またはそれを求めて映画館に足を運んだユーザーの中には、斬新かつ新鮮な体験と捉える人もいれば「いや、そうじゃない」と拒否する人もいるだろう。
この「いや、そうじゃない」というのはもちろん「次元領域デュエル」そのものを指してもそう言い切れるので、全方位に対して比類無き破壊活動を敢行する「次元領域デュエル」はやはり並大抵のネタではないとここで改めて認識する次第である。

ところで、超融合はパラドクスがSinワールドを使って、その後さも当然のように「このSinワールドのデュエルでは、ライフがゼロになると同時に死を迎える!(CV:田村淳)」と言うのだが、その点次元領域デュエルは、それ自体に殺傷能力は無さそうなのでそういう意味ではさしたる攻撃性は持ち合わせていないとも言える。
もっとも、雑魚神くんはそんなの関係無しに邪魔者を他次元に消し飛ばすリアリストなので、あんまり関係はない。ホセが相手なら「貴様らは本物のデュエリストではないな?」と非難されていただろう。

さらに、本作は「多次元」や「肉体と精神または魂」といった命題にも踏み込もうとした形跡が見られ、新世代デュエルディスクの設定などにその名残が見受けられるのだが、その辺をあまり生かし切れてない点もマイナスであろう。

とまあ4000字稼ぐためにあれこれ書いたわけだが、それもこれもどういった結論に帰結するかというと、本作はあくまで初代「遊☆戯☆王」のアフターストーリーを描いた作品であり、ファラオが冥界に還った後に彼らがどんな人生を歩むのか?というドラマを描いたものである。決して「みんなが元気に邪悪に遊戯王OCGをプレイする映画」を描きたかった訳ではないのである。アニメ作品の連中は万事をデュエルで解決しようとする末期デュエル脳患者ばかりであるが、本作のデュエルは雑魚神くんが次元パワーで消せない相手を敗北たらしめる手段でしかない。
※ただし海馬のデュエル脳は中期患者クラスである

「○○を発動していた!」「それはどうかな?(カーン!!)」などのお馴染みの台詞を忘れないとか、「クリアクリボーを分裂召喚する!」など台詞の細部に至るまでオールドテイストを忘れてないこと、激烈にダサいダーク雑魚神くん、純粋に格好いい青眼を初めとしたモンスターのCGなどなどなど、もっともっと細かな点にも言及できるのだがキリがないのでここらで幕引きにするが、本当に細かな所にまで意識を向けた完成度の高い映画だと思う。故にユーザーのタイプによって共通の評価を得にくい点や、単調とは言わないまでも流石にクッソ長い点など残念な箇所も軽視出来ない。100点満点で85点といった所か。

【映画感想】 劇場版「遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」_f0085832_2212470.jpg
古参ユーザーなら間違いなく首を傾げるだろう青眼の亜種たち。よもやこいつらが現環境のトップに食い込んでいるとは思いもしないだろう。






# by aonokairo | 2016-05-05 22:04 | Note